編集後記 紹介
◇躁病とうつ病が出現する病態を詳細に記載し,疾患単位として抽出したのは,Falret Jean-Pierre (la folie circulaire) とBaillarger Jules (la folie a double forme)であり,これが現在の双極性障害の概念につながるものとなった。前者は寛解期をはさんで躁病相とうつ病相が現れる経過を1つの疾患として捉えたのに対し,後者は寛解期をはさまずに病相が入れ替わる場合を単一疾患として捉えた。この点においては,今日の双極性障害の疾患概念の父はFalretであるといわれる。
◇気分障害の80%は大うつ病と気分変調症が占めると考えられてきたが,軽躁病が診断に含められたことにより,双極性障害のlow endの概念は次第に拡大した。双極・型障害を定式化したのはDunnerら(1976)であった。双極・型障害と・型障害を併せると,一般住民での有病率は1.3%になる。大うつ病と診断された患者の22%が双極・型障害に該当した。さらに詳細な情報を得た1カ月後の診断では,40%が双極・型スペクトラムに該当した。Akiskalは,大うつ病と診断される患者の30〜70%が双極・型スペクトラムではないかという。ここで問題となるのは,軽躁病の診断の精度である。双極性障害患者の37%が初診時に大うつ病性障害と診断される。双極・型障害の正確な診断率はわずかに9%でしかないという報告もある。
◇ 一方双極性障害のhigh endには,気分に一致しない精神病症状を伴うエピソードあるいは統合失調感情障害,さらにはcycloid psychosisやbouffee deliranteの流れをくむ急性一過性精神病との関係が未解決のままに残されている。
目次
●特集
双極性障害100年の歴史を振り返る─双極性障害,非定型精神病,統合失調症─ 中山 和彦・他
双極性障害は誤診されやすい 大森 哲郎
小児・思春期の双極性障害─近年の増加の要因について─ 加藤 忠史・他
Soft bipolar disorder(軽微双極性障害)概念について 阿部 隆明
統合失調感情障害 兼本 浩祐・他
STEP-BD : 米国NIMH双極性障害の縦断的治療研究 織部 直弥・他
双極性障害の病跡学 越野 好文
双極性障害の司法精神医学 風祭 元
双極性障害の脳画像 鬼塚 俊明・他
双極性障害の分子遺伝学 岩田 仲生
双極性障害の分子生物学 加藤 忠史
双極性障害の精神生理学・神経心理学 福田 正人・他
双極性障害の心理療法・心理教育 馬渕麻由子・他
ラピッドサイクラーの薬物療法 岡本 泰昌
双極性うつ病の薬物療法 山田 和男
双極性障害再発予防のための維持療法 寺尾 岳
期待される気分安定薬 石郷岡 純
●講演紹介
Imaging Neurotransmission with PET─Role in drug development Marc Laruelle
●日本近代向精神薬療法史 さまざまな抗精神病薬
─Butyrophenone, Thioxanthene, Iminodibenzyl,持効性抗精神病薬(デポ剤)など─ 風祭 元